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Kyohei
Abe
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阿部恭平の
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Vol.109
2020 02/05 Wed.
カテゴリー:

フォークナーの講演 「音は聞かれて音楽になるのか?」

ファーラウトの本棚で見つけて購入したフォークナーの長野での講演が面白い。ある作曲家、ピアニストが「基礎練習をしながら洋書を読んでいる」と言っていて「よくそんなことできるなあ」などと感心していたが、最近夜に左手のスケールの基礎練習をしながら右手でこの本を読んでいる。講演やインタビュー程度だと辞書も(あまり)いらないから片手でちょうどよい。
中身ではヘミングウェイを軽くバカにしたり(とはいえ、ある種の敬意を感じるけど)、スタインベックを「彼は小説家というよりドキュメンタリー作家でしょ」などと一蹴。南北戦争後のアメリカ南部人の葛藤や人間の存在を追求し続けた作家、意外と口は悪いのか。

ある質問がとぶ。
質問者:貴方の「熊」などの短編はともかく長編はとても難しい。言葉の使い方自体が普通ではなく、正直言って読めないこともある。最近日本の作家も難解な作品を書くことが多い。私個人的には作家が文を書いた時点ではただの作文で、読まれて初めて文学作品になると思っている。貴方はどのように文体について考えているのか?

フォークナー:貴方の言うこともわかる、読まれて初めて文学になる。ただし作品が勝手に作家の創造力を超越する、それも文学の一面であり、貴方の定義と共存しえることなんだ。例えばモーツァルトの音楽作品、あれは元々…

(以上、個人の解釈。誤訳、意訳の苦情は受け付けません)

などとフォークナーも熱く語る。さあさあ、続きは?と思ったところで次の質問。

「フォークナーさん、好きなタバコはなんですか?」

おいおい、なんだこのどうでもいい質問は。フォークナーも「イギリスのダンヒルを昔から好んで吸っててね」とか返してる。さっきまでの白熱はどうした?
フォークナーのこの講演、通訳者が訳せない箇所があったという逸話があるけど、たぶんここなんだろうな。タバコの質問にずっこけてしまったところで本を閉じたのであった。

 

追記:講演の序盤であったが「あなたは南部が好きですか?嫌いですか?」という「アブサロム、アブサロム!」のラストシーンのような質問にたいしI love it and I hate it.と即答しているのは印象的だった。ごく自然な答えだが、国や土地を愛するのも非難するのも他者に強いられるものでもないし、100%肯定や否定もありえない。ましてや昨今たまに耳にする「嫌いなら出ていけ」とか「好きなら献身的であれ」みたいな意見は幼稚で浅墓と言わざるを得ない。

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