昔から青、紺色を好む。「お、いい色だね」とかつい口に出るのは大抵そういった色を目にしたときだ。贔屓してる大洋ホエールズ、横浜ベイスターズの影響も多少あろうが、先日ふと幼少期のことを思い出した。
子供の頃、六畳の子供部屋(兄と共有)で兄の友人が三人ほど集まっていた。その中で私は突然プラモデルかなにかに塗装したくなり、ウキウキと父親に買ってもらったばかりの鮮やかな青色の塗料を手に取る。なぜかわからないが、六畳に四人もいる窮屈な中で塗料を開けて塗ろうとする。立て付けの悪い机だったこともあり、当然のようにこぼしてしまう。私はおそらくこぼしたショックと「怒られる！」という怖さで声をあげて泣いた。母親が飛んできて「どうしたの？」と声をかける。兄と友人達は「知らない、なんかこいつ塗ろうとしてこぼしたんだよ」くらいの対応。
母親は友人達の手前もあったのか、「どこ塗りたかったの？ここ？これでいいのね？」と一部を塗り、こぼれた塗料を拭いて去っていった。
その後、その件については怒られたりすることもなかったが、個人的にその後から塗料を扱うときにはすごく気を払うようになった。やがてそのことをよく覚えていたのか、ある程度の年齢になってからたまたま見つけた模型屋で同色の塗料を買った。記念品のような気分で机に置いたまま何年も過ごした。

昨年、実家のリフォームの際に机も塗料も迷う間もなく廃棄したが、私はあの色の塗料に何かを見出だしていたような気もするし、もしかしたら塗料の方も時おり机の隅から私を覗いていたのかもしれない。

年を取ると何かを得たり失ったりする。それだけの取るに足りない思い出話であった。25回目の母の命日の前夜に。