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Kyohei
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阿部恭平の
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Vol.101
2019 11/26 Tue.
カテゴリー:

悪の凡庸さと正義の凡庸さについて

ある時期からナチスドイツに興味を持った。ハンナ・アーレントの「イェルサレムのアイヒマン」を読んでから始まったものだが、なぜあのような悲劇が起きてしまったのか、知れば知るほど普通の人間達の所業に思える。普通というか、凡庸というべきか。
先日NHKのドキュメンタリーをみた。ナチスドイツの時代に少年だった人々が証言する。彼らがヒトラーに心酔し兵士となる。ロシアで捕虜になり、敗戦後にはアメリカの作った映像を見せられたという。収容所におけるユダヤ人の悲惨な姿を中心としたものだ。そういった映像を見せることにより「お前らが支持した政府が行ったことだ」と見せつけ、反省を促す(責任を感じさせる)のが目的だったのだろう、と元兵士の老人は語る。しかし彼は何も感じることはなかったらしい。ただ「ひどい映像だな」と思っただけで。
その後に彼はロシアでの重労働の中、体調を崩して肺炎になり入院することになった。ある看護師が「これを飲みなさい」と毎晩そっと(当時貴重な)牛乳をコップ一杯持って来てくれたという。やがて体調が回復し、彼女に尋ねる。「なぜあんなことをしてくれたのか?」すると彼女は「あなたが弟に似ていたから」。「弟さんは今どうしてる?」と聞くと「ユダヤ人だからドイツ兵に殺された」と看護師は返したという。

おそらく彼はその時に自らの過ちを自覚したことだろう。ナチスはドイツ国民、ユダヤ人を個人と見なさず、アメリカはドイツ兵を個人として扱わなかった。それに対し、彼女は元兵士をドイツ人ではなく個人として扱い、彼女自身もユダヤ人ではなく個人の思いで行動を選んだ。ハンナ・アーレントは差別や偏見を生むのは悪ではなく凡庸さだ、と説いている。正義や悪ではなく、凡庸さこそ他者、そして自分を一人の人間として尊重することを妨げてしまうのかもしれない。

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