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阿部恭平の
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Vol.127
2020 06/14 Sun.
カテゴリー:

谷崎潤一郎の正直さ

年に一度くらい谷崎潤一郎の饒舌録を読む。記憶力が悪いのか作品がすごいのか、読むたびに発見がある。
年を取るにつれて東洋趣味に傾く様子や、西洋文化の取り入れ方(そしてそれに傾倒し過ぎるであろう今後=現代)、歌舞伎を中心にする舞台芸術について、奔放に難しい言葉を使うこともなく書いている。日本文学史でも傑作と評される森鴎外の史物より幸田露伴の作品を買い、芥川作品もぶったぎる。媚びることなく偉ぶることもなく、正直に書く、これぞ谷崎さんの真骨頂。

谷崎は舞台に関して脚本がどうだの演出がどうだの、よりも演者を優先させるべきと断言している。「(自分は)正直言って、芝居というよりは美しい娘を目当てに観劇に向かう」などと、はっきりと。「お遊さま」や「細雪」などで多少なりとも脚本にも関わることのある、大作家、谷崎がこう言うのだからどうしようもない。

「自分は作家なのだから脚本にしか興味はない」などと言えたら意気に聞こえるが、人間そんな単純なものではない。以前にあるミュージシャンが「プロとしてやっていくには最低限の技術に+αがなくちゃダメ。容姿、話術、演出でも何でもいい。そう考えるとアイドルも立派なプロ。技術だけを武器に、という意気込みは時には危険」 とSNSで述べていた。妙に腑に落ちたのか、ちらっと見ただけなのにまだ覚えている。純粋に「作品だけ」を評価するというのは現実的に不可能だし、そんなことに徹底する意味も別にない。作品の質さえよければ方法はともかく結果として評価される。有名になった過程や演出方法はともかく野坂昭如とソレルスも作家だし、さかなくんは学者だ。

ともあれ谷崎さんはこの作品に限らず、とにかく正直であり続ける。漱石を誉めたと思えば「明暗」の文句を並べ、自らの変態性を小説にあらわし、(芥川のみならず一般人の)故人に鞭打つようなことも随筆でさらりと言い、逆に評価低いものを熱心に誉めたりする。感性に正直であること、それが谷崎作品の真髄であり作品のエネルギーにもつながっているのかもしれない。

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