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阿部恭平の
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Vol.167
2021 08/13 Fri.
カテゴリー:

芸のつく職業

芸にまつわる人の呼び方には様々なものがある。
芸術家、芸人、芸者、など「芸+人」という意味合いの漢字を並べるだけのにそれぞれ何となく意味が変化するのは実に日本語らしい。芸者というと悪口にもなりえる。かつてあるイベント会社の人に聞いた話。映画やドラマ、CMにもよく出る著名な歌舞伎役者が睨む場面でタニマチに顔を向けなかったとかいう理由で、友人を多く連れてきていたタニマチは激怒。終演後にその役者の楽屋に乗り込み「この男芸者が!おれ(私?性別は失念)の顔に泥ぬって!」と怒鳴り、役者の方は畳に両手をつきながら謝罪していたという。この場合の「芸者」はどう考えても誉め言葉ではないね。
芸人という言葉も常に誉め言葉とは限らない。MCや喋りの達者な人を「あいつは芸人だから」なんて指したりする。演奏家でも大いに観客を沸かせたり、熱狂させるような演奏すると「芸人だなあ」なんて半分誉め、半分呆れるように表現することもある。
その点、芸術家という表現はそこまで悪口にはならないのかな。アーティストなんてのも同意だろうか。浮世離れしてる人を揶揄するぐらいなもので、どちらかというと誉める意味の方が強い。自分の金銭的なことや俗世間には目も向けず、己のやりたいことに夢中になっている、などなど。
ただし個人的には、芸術家やらアーティスト(アーチスト、なんて表記もあるね、そういえば)という響きこそ胡散臭いと思うし、好きになれない。芸者、芸人と呼ばれる方がよほど好ましい。嫌味な言い方だけども、「芸術家」なんてのがちょっとした誉め言葉になって馴染んでいる時点で、この国と社会には色々なものが根付いてないんだろうな、とがっかりしてしまう。
石川淳は三島由紀夫と対談の中で「ゲージュツ家とか呼ばれて喜んでいるようじゃね」とか(やや三島に念をおすように)嘆いてるし、谷崎潤一郎も芸談という作品で芸術家という呼び方を明らかに嫌っている。そんな頃からもう5、60年以上は経っているのかな、人は成長しているのやら、退化しているのやら。
そういえばジョイスの「若い芸術家の肖像」という長編がある。この作品の解説によると、アイルランドでartistというと「詐欺師めいた奴」という意味もあるという話だった。そういう意味ではSNSやなんかで自分の賛美者や同業者と馴れ合い自己評価をたかめていく様子やYouTubeなんかで知ったような顔して振る舞う「アーティスト」に対しては、アイルランドの皮肉が現代でもピッタリなのかもしれない。

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