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阿部恭平の
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Vol.169
2021 08/26 Thu.
カテゴリー:

チャーリー・ワッツとアンチヒーロー

チャーリー・ワッツが亡くなった。高校の時分からストーンズを聴き始め、その後数回ライブにもいった。いかにも不良っぽい、真っ黒い衣装や上半身をはだけた格好でライブするミックやキースに比べて、チャーリーは昔からTシャツ一枚(しかも袖無しであることもしばしば)。年を取ってからはシックな装いになっていき、スーツやジャケットが似合う紳士というか「え、この人がsex, drug, rock'n rollの代名詞のバンドメンバーだったの?」と思うほどの落ち着いた風貌。
ある意味マイペースであり続けた人なのかもしれない。スネアを叩く2拍4拍でハイハットの刻みを止めるあのスタイルは好き嫌い別れるだろうが、もうストーンズのドラムはあれで馴染んでしまったのだから仕方ない。色々言われたこともあったろうがそのスタイルは曲げなかった。そういえばミックがナイトの爵位をもらったことが話題になったときにもインタビューで「おれはブレア(首相)からもらいたいものなど一つもないよ、ミックは嬉しいんだろうがな」みたいなことを言っていたのを思い出す。風貌はともかく、不良っぽいというか、根っこには反骨精神みたいなものもあったのだろう。(当時アフガン空爆にのりだしたブッシュに追随するブレアを批判することが反逆なのかどうかは別にして)

反逆者といえば、先日ヴォネガットが随筆で触れていたものでヘッセの「荒野のおおかみ」を読んだ。文学用語でいうところの典型的なアウトサイダー、アンチヒーローの物語だった。言葉の通り、わかりやすい英雄ではなく、社会通念などに反する形の主人公などを指すのだが、当然のことながら様々なタイプがある。古くはハムレットにマクベス、ラスコーリニコフ、それに「異邦人」のムルソー、現代で見れば英雄だが発売した当時はハックルベリー・フィンも立派なアンチヒーローだ(その逆説的なところがこの作品の魅力でもあるんだけど)。「荒野のおおかみ」の主人公、ハリーもそれに当たるのだが、「地下室の手記」の主人公(ヘッセはもちろんそれをモデルにしたんだろうけど)なんかに比べると妙に薄っぺらく見えて、正直言ってそれほど私の好みでもなかった。ただヘッセの作品を読んだことがなかったもので勝手に暗く怖い、自然主義めいた小説家と思っていたが、これほど手法が現代的であることに驚いた。いわゆるポストモダンというか、小説のなかにモーツァルトが現れ会話したり、小説内での論文やら、このような時代に様々な手法を試みていたとは。人間好きでも嫌いでもなくても、勝手に先入観や思い込みを抱く。好き嫌いがあったらもっと抱く。そういうものである。返却期限がきてしまい読めなかったが「ガラス玉遊戯」もさぞ手法に凝った作品なんだろうな。

そう考えると先のストーンズへの勝手なイメージこそ思い込みで、ミックやキースは実は従順でチャーリーみたいな人が反逆者、なんてことも大いに考えられる。楽器をもたされたロバの横で満面の笑みで飛び上がっている(@Get Yer Ya Ya's Outのジャケット)反逆者ってのもお茶目でかわいいけど。
なんにせよ、昨今も熱心にストーンズを聞いているわけでもないが、年を取ったな、と実感した。十代に熱中した人の訃報とはこういうものなんだろう。

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