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阿部恭平の
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Vol.062
2018 04/08 Sun.
カテゴリー:

Phillippe Sollers Picasso, le héros 3

3 作品

ピカソは言う。「絵画とは感性の問題ではない。権力を奪取しなければならないのだ。自然に取って代わらなければならず、自然が提供する情報に左右されてはならない」ここでいう権力とは自然に対するものであり、自然との調和、共存を真っ向から否定する。

ソレルスとピカソはあっていると冒頭に私は書いた。転向と受け取られるほどのスタイルの変化を繰り返してきた点、早熟である点は通じている。本質的に二人が似ているのかどうかはわからないが(おそらく本人達も)、ピカソという個性を変革し続けた20世紀を代表する芸術家の代名詞たる存在に対し、ソレルスは自らのやり方で礼賛の言葉を送る。彼らが似ているのか、ソレルスの一方的な憧れか。また90歳過ぎまで色情魔でそれまでの芸術家とは比べられないほどの数の作品を残したギョロ目の男が本当に英雄なのか、時代の流れにのった運の良い変わり者なのかを判断するのは読者次第ということになる。

なおピカソの画集の印刷は〈セルクル・ダール社〉によって行われており、死後に出版された画集「ゲルニカ」を除いてピカソ本人が当然確認、了承をしている。ソレルスはそれを尊重し、同社の画集と同じ写真を用いており、さらにこの日本版も出版社、訳者の意向で原書と同じものを用いている。おかげで一冊7000円という高額なものになっているが、たしかに画質は素晴らしく細かなタッチも判別できる。ブラッサイによる写真も多く、ピカソがガードルート、サルトル、ボーヴォワールなどと共に写ったものもある。ソレルスの凝りに凝った恣意的な文を訳し、決して数多くは売れないであろうこのような本を出来るだけ最高の品質で出版した方々には敬意を表したい。

最後にはピカソが90歳頃に描いた「若い画家」という作品が紹介されている。グレー、白、青の比較的シンプルな組み合わせで描かれた子供のような表情が印象的だ。ソレルスはその中に「筆を握った画家には、決して屈服しないという無邪気な信頼があふれてる」と述べ、次の文で締めくくる。「人が認めようと認めまいと、絵の生命は詩なのだ」

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