先日、ひっそりと歳を重ねた。いよいよ大台。思えば長く生きたものだと思う。肉親がそうだったもので自分もなんとなく、30代後半には大病を患うものだと思って過ごしてきた。が、今のところ何もない。とはいえ、明日、来週、来月にでも何かあるかもしれない。神のみぞ知る、誰にもわからない。知ったところでどうしようもない。

死を意識するのは人間だけという話がある、まあそうだろうね。生きているのに自分の死後を想像するのは人間だけだし、そういった死への認識があるから哲学も宗教も生まれている。先月くらいにふとしたきっかけでハイデガーという哲学者に興味を持ち、入門書みたいなものを読んでいるけれど予想したとおり難しくてよくわからない。ただし彼の言う内存在だのってのも、結局は「死を意識する人間(の存在)」というテーマが中心になっているようだ。
哲学にそれほど関心なかった私が興味を持ったきっかけはただ一点。戦後にナチスに関わった学者として裁かれる中、老荘思想をドイツ語に翻訳して過ごした、とか、戦後ナチスに関わった思想家として扱われる中、日本を含むアジアの文化や芸事に関心を示したり、晩年までヘルダーリンの詩を研究した、といった彼の精神のエネルギーみたいなものに妙に感心したからだ。せっかくだから彼の哲学にも触れていきたいと思うけど、まだ理解も程遠いのでそのうちに。

話は変わるが最近、我が家の猫は夕食を終えて寝ているとやがて「ギニャー！」と声をあげて眠りから覚める。悪夢でも見ているのか、ストレスがたまるのか。こちらの存在を確かめるように寄ってきては、しばらく私の手を舐める。やがてまた落ち着いて眠り始める。人間も小難しいことを考えるよりも「ギニャー！」とでも叫んだ方が健康的なのかもしれない。
そんなわけで年齢も大台に乗り、暑くなってきた上に髪もうっとうしいので、ちょっとした気晴らしもこめて、髪を切ってくる予定です。