元首相が選挙活動中に撃たれるという事件。おそらく歴史的事件として今後も語り継がれるだろうね。
人を殺すのは許されない行為、ということは大前提として、元首相をいたずらに美化することも、その動機となった過去も、とある団体との関係も、長くなるのでここでは問わない。というか、まだまだ情報も錯綜しているし、私がこんなところで書く必要もない。
私が特に気になったのは、元首相の友人(とみなされている)の対応だ。複数人、彼の逝去が公式に発表される前にSNSに彼の死を記したという。「関係者から情報を得ましたが残念ながら亡くなられたようです」てな具合に。なんとまあ見苦しく下品なことか。
思うに、彼らとしては一種の自己承認だったのだろうと思う。「そんな情報を特別に知ることができるなんて元首相とよほど親しかったんだなあ」という感嘆めいた声を想像上で感じていたのかもしれない。しかし私は初めてであろう、元首相に同情というか哀れみを覚えた。彼が仲間友人と思っていた連中は、実際のところ人間的つながりではなかったということになる。役職、権威でもってつながっていただけであり、それらも自己承認の一環に過ぎなかったのだな、と。そうじゃなきゃ家族が発表するよりも先に発表するなんてことがあるだろうか。
こういったこともSNSの弊害なのかもしれない。個人的つながりで電話等で「亡くなっちゃったらしいよ」というのと、公の場で不特定多数、ましてや見ず知らずの人にも情報を流すのはわけが違う。公の場で書くことにより、彼らは聞こえないはずの声を聞き、それを自己正当化、自己承認を覚える。元首相にもその友人なんかにも一切の興味も抱かなかった人々も「この人親しいんだ、じゃあ確かな情報なんだな」と彼の存在を知ることになる。しかし実際にあってないし、話してもいない。ただただ空疎な関係性だ。
そう考えると便利になった現代は何やら醜悪なものをさらけだしている気もする。それをひっくるめて便利というか、面倒というかは人次第、状況次第だろうけど。