世の中は常にもがもな
最近都内、特に都心部を車で走る機会が多かった。午前中であったり、昼間、夕方に夜。様々な時間帯で走ったおかげで改めて色々なものを見ることになった。例えば東京タワー、昼間に見る分には「あ、東京タワーだ」と気づく程度だが、夜だと照明の力もあるのだろう、きらびやかであはあるがちょっとした圧迫感めいたものを帯びているように感じる。とはいえ、近くから見上げる東京タワーの姿は嫌いではない。
嫌いではない、といえば、そもそも都心を走ること自体も悪くは感じなかった。皇居やその周辺に、丸の内、霞ヶ関から海に向かうとそこら中に建つ高層ビル。坂が少ない分同じような構図が続いているように見えるけれど、それもまた一興。まさに東京。That's very Tokyo !って感じですな。昔は「面白味のない建築が並んでるわ」とか思っていたけど。
まるでお上りさんみたいなことを書いている。これは都内に行く機会が減ったから新鮮なのか、もしくは機会が久々に増えてきたからなのか。いずれにせよ、以前よりは都心の風景に愛着めいた感情を抱くに至っている。あるいは、考えすぎなのかもしれないが、少し私はこの風景を哀れみをもって見ているような気もしている。今後の日本の状態を思うと、この風景も良い思い出になるかもしれない、と。
人口や経済の話を細かくするまでもなく、見通しは決して明るくない。戦後から奇跡的なほどの経済成長をとげたこの国の風景もまた変わっていくかもしれない。90年代を「まだバブルの恩恵があった頃」と語れるように、2020年代も将来から見ると「まだよかった頃」になりえる。
そういえば戦中から戦後にかけて活躍した作家が、(目下の大河ドラマと同じく)鎌倉時代を題材にした作品にて「明るさは滅びの姿であろうか。 人も家も、暗いうちはまだ滅亡せぬ」と有名な文句を残していた。まだこんな風に暗いことをぼやいているうちは大丈夫かな。そういうことにしておこう。
もうすぐ晩秋か。あっという間に冬になる。