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阿部恭平の
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Vol.211
2023 01/13 Fri.
カテゴリー:

ジェフ・ベックの訃報について

ジェフ・ベックが他界した。急な病によるものとのこと。
高校の頃にギターを弾く友人からジェフ・ベックのすごさを熱心に説かれ、自分も好きになった。ちょうど来日もあったことで聞きに行った。持ち替えたりすることなく、ひたすら白いストラトキャスターを引き続け、メンバー紹介もせずに最後に「アリガトウ」と声を出しただけだった。曲の合間に若い女の子がモニターに映ると「ケータイ、オシエテー」と叫ぶミック・ジャガーとは大違いである。(それはそれでとても素敵なことだけど)
ギターの音色は実に深いものだった。爆撃のような音から軽やかな歌、しまいにはささやくような声まであらゆることをギターで表現していた。当時作ったばかりのテクノ調の曲からブルース、「哀しみの恋人たち」に「A Day in the Life」まで(思えば私はビートルズのものよりも先にジェフ・ベックで知ったのでかった)、さらにはBlue windのような曲といい、ギターだけ(しかも全編右手も指弾き!)でここまで世界観を示せるのかと感激したことを今でも覚えている。
その後も雑誌のインタビューなどもよくチェックした。あの時代のミュージシャンにしては珍しく、あまり同時代のミュージシャンを褒めもしないし、批判めいたことも言わないのが印象的だった。今思えば、言う必要もなかったんだろう、自分と比較できるようなタイプもいないんだから。タッピングという奏法について「たまにやる分には楽しいけど、あまりやると見飽きた手品みたいになるね」などと語っていたっけな。あと聞いている音楽についても「ブルガリアの聖歌隊に熱中してる、彼らのヴィブラートは自分のギターそっくり」などと、意外なこともあり、読者としては楽しめた。思えばその後、私が関わることになったスタイルを生んだ、ジャンゴ・ラインハルトの名を知ったのも彼のインタビュー記事からであった。
作曲もせず、歌も入れず、ただ自分の好きなスタイルや楽曲をレパートリーにして弾き続ける。多くのギタリストが作曲やアレンジ、新たなバンドスタイルやユニットなど、「音楽家」になろうとする中、あくまで「ギタリスト」であり続けた存在であった。しかも(インタビュー等では家ではアコースティックギターを弾くと述べているものの)基本的には一本のエレキギターでほぼ全てのステージをこなしたと言えるんじゃないだろうか。しかも聴衆を選別したり、見下すようなスタイルではなく、おそらくインストの音楽で個人の名前で集客し続けた数は世界でも有数だろう。(マイルス・デイビスもホロヴィッツもピアソラも、ジェフ・ベックに比べたら認知はされていないのではなかろうか)
孤高かつ自由、そして長年活躍し続けた、本当に稀有な存在が消えてしまった。ある時期から彼のベーシストとして活躍し始めたタル・ウィルケンフェルドの追悼コメントがちょっと現代的で、なお愛情があってよかった。
「(ジェフが)私のことをまるで本当の娘のように扱っている、と長くWikipediaではまことしやかに語られていたようだ。実は私もそう感じていた」

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