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Kyohei
Abe
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阿部恭平の
ブログ

Vol.225
2023 07/25 Tue.
カテゴリー:

某企業のニュースから

私は元来、楽器や機材に対するフェティシズムみたいなものはさほどない。もちろん見かけの良い楽器とか好みの形などはあるけど、良い楽器だからといってそれを一日中眺めるとか、そういう趣味はない。弾くならともかく。
しかしそんな私でも自分の楽器に割れ目ができたときは少し落ち込んだ。先日北関東に行った際、リハーサルで楽器を弾こうとすると、自分の左足があたる辺りにその前日まではなかった木の裂け目があった。自分が購入した頃から小さいキズがあったところだが、車に積む際にそこにちょうど当たってしまったのだろう。すぐに世話になっている職人さんにそこの写真を送り、修理の依頼をしたが、しばらくその裂け目もその写真もできるだけ目にしたくなかった。慎重にケースに包んだ後はスペアの楽器で日々を過ごした。
たまに映画なんかでも楽器が壊されたり、叩きつけてバラバラになるようなシーンがあるが、そういうのも苦手だ。いつからだろう、やはり自分が楽器を弾くようになってからだろうな。弦楽器に限らず管楽器でもピアノでもイヤな気分になる。
さて先日から中古車販売や修理に携わる会社についてのニュース取り沙汰されている。その会社は車を自分達でキズをつけたり、壊したりして保険金を受け取ったり使わせたりしていたらしい。偽装ってやつだね。そういや、毎年その年を象徴する漢字を一字選ぶ、という無味乾燥なイベントがあるが、ある年が「偽」だった。イベント自体がくだらないことは別にして「何言ってるのよ、今年に限らずだろ」と思ったものだった。公害、薬害、食品偽装、新たな詐欺犯罪の誕生、全て日常じゃないか、と。
こんなことは日常茶飯事。とはいえ、車の修理に関わる仕事の人々は車を傷つける行為に罪悪感みたいなものは覚えなかったのだろうか、と思った。私みたいな人間ですら楽器が傷つくのを見るのが辛いのに(不思議なもので車や家具など他のものはそんな気にならない)、修理を仕事にしてる人なんてなおさらだろう。たしかドストエフスキーが書いてたが、椅子を作らせては破壊してまた新たに作らせる、という精神的破綻を引き起こすロシア刑務所の労働そのものじゃないか。それも企業がやらせていたというなら、企業の罪はますます大きいと思う。
青臭いことを書くようだが、結局は愛着があるかどうかにつきるのかもしれない。どれだけ、手先が器用で、天才的な木工彫刻の技術があるとしても、楽器に愛情もなく経済的な視点だけで仕事をしているような人に楽器の修理は頼みたくない。木彫り職人になればいいのに、とは思うくらいで。壊れた楽器を見るのが辛いという私がナイーブ過ぎるにしても、車に愛着ないなら車以外の仕事をすればいい。
そういえば、これは音楽についても言えることで。例えば結婚式やらイベントの演奏をただの収入源とみなし、何の思い入れも敬意もなく演奏している人もいる。(私のまわりにはあまりいないけど)やはりそういう人達が「そういう固定ギャラのいい仕事まわしてよー」とか言ってるのを見たことあるけど、そりゃまわらないよね。そういうものである

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