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阿部恭平の
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Vol.249
2024 03/25 Mon.
カテゴリー:

「瞳を閉じて」を観て

「瞳を閉じて」。ビクトルエリセの約30年ぶりの新作。上映が始まってから十日ほどして、なるべく情報や予告などを目にせぬように過ごした後、映画館へ行った。

 

 

映画館には平日の朝九時過ぎ上映なのにも関わらず、八時半過ぎからそれなりに人がいた。開場時間が近づくにつれ人は増えていく。「おしゃれそうな大学生や渋い夫婦まで。やはり『ミツバチのささやき』の影響か。エリセの新作のために平日からこんなに人が集まるなんて嬉しいなあ」とか思っていたら、上映する作品はもう一本あり、開場後には大半の人がそちらに流れていった。彼らの佇まいにどこかヨーロッパ趣味らしいものを感じたような気もしたが、思い込みだったのだろう。結局こちらの劇場は10人足らずの観客。多いのか少ないのか、よくわからない。

 

 

さて作品はある映画のシーンから始まる。エリセ本人がかつて撮ろうとしたと言われる「ユダヤ人の富豪がかつての隠し子を探そうとする物語」だ。主人公は映像作家であったが、その作品を製作中止したことから映画を撮らなくなってしまっている。それだけでもエリセ本人を投影しているのがわかる。

 

 

映画批評の町山さんの解説を聞いたからか、改めて考えると主人公はエリセ本人を強く投影していることがわかる。思えば前作のドキュメンタリー「マルメロの陽光」も毎年マルメロを描こうとしている画家、アントニオロペスのものだった。50年以上前の「ミツバチのささやき」、40年ほど前の「エルスール」(こちらはもっと長く描きたかったが、前編で終えた作品、つまり未完成らしい。個人的には大好きな作品だけど)を経て、彼は悩み続けていたかもしれない。「ミツバチ」の主演子役であったアナが立派な大人になり「瞳を閉じて」に出演するのは集大成のようにも、儀式のようにも感じられた。

 

 

それにしても相変わらずの情景と音、それに物語。映画内映画はもちろん、例えばかつての恋人に自分の好きだった曲を弾き語りしてもらう場面などもよかった。エリセ作品にはアップライトピアノがよく使われるのだが、改めて音色の良さに気づかされた。グランドに比べたらそりゃ音の粒立ちなどは違うけど、素朴さというかなんというか。

 

 

そんなわけで久々の映画館での新作映画の鑑賞はとても充実した時間をすごせた。今までもたまに映画館でエリセの作品やっていたら観に行っていたけど、この作品もしばらく経ったらまた観たいと思う。そのときにはどういうお客さんがまわりにいるんだろうか。

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